2021/09/10 16:36


少し大人向けの絵本の発刊です。

江戸時代中期、泰平の世において剣術は秘められた本当の意を汲み取ることが困難となりつつありました。
その中で、下総国関宿(せきやど)藩(千葉県)、久世大和守の家臣である佚斎樗山(いっさいちょざん)は、兵学・武術はもとより、神仏や荘子・禅などにも精通した文才溢れる人物でした。
彼は寓話の形をとりながら、道教の文献『荘子』の思想も説いた『猫の妙術』を執筆しました。これは、武芸の秘伝書、剣術指南本として読み続けられたのです。剣術指南本でありながら、技術的なことではなく「心」の在り方を説いたものでした。
さて、『荘子』の作者である荘周は、人はなぜ苦しむのかと思索し、「万物斉同=分別の否定」と「道(たお)=説明できないもの」という考えにたどり着きました。
万物斉同、本来この世には善悪も賢愚も醜美などの区別はなく、あらゆるものが道においておなじものであるという分別を否定したものです。あらゆる判断基準は一面的なもので絶対的ではないということです。
道(たお)、自分の存在価値や人間の生死など、問いかけても答えの出ない理として考えました。

この絵本の著者のまるお たお様は、数多の意訳や出版がされている『猫の妙術』を、より分かりやすく絵本の形で発刊されました。心の在り方を模索する現代に通じる一冊だと思います。
まるお様は中学から剣道を始め、現在では剣道教士でもあります。竹刀稽古の他、小野派一刀流・甲源一刀流も併せて修行中とのことです。
「たお」というお名前は「道(たお)」の理からなのでしょうか。

『荘子』のなかからです。
「道は聞くべからず、聞けばそれにあらず。道は見るべからず、見ればそれにあらず。道は言うべからず、言えばそれにあらず。」

ぜひご一読ください!