2025/01/29 10:50

昨年12月に発刊した「おばあちゃんのハッサクとぼく」の紹介です。

実はこの絵本は一旦別会社で発刊されたものの、その後製本の不備から(当時の製本の「糊」は今ほど柔軟性のないものでした)ページがバラバラに解けてしまったのです。そこで今回は「糸かがり製本で」ということで文と絵を手掛けた「まるおたお」様からの依頼がありました。
現在の「糊」は高性能ですので、本が壊れてしまうことはそうそう無いのですが、あえて「糸かがり」という指定から、この本が大切に残されていくことへの想いを感じました。

原著者の佐々木早苗さんが経験した息子さんの成長に伴う悩みに、母親の目線で書き残したものです。
おばあちゃんから送られてきた甘いハッサクのタネを庭に埋め、ようやく芽吹いて葉を茂らせるようになったころに、一家は引っ越すことになりました。ハッサクの木も一緒です。
なかなか花を咲かせることのないハッサクを眺めながら成長していく息子さんですが、中学生になったころから学校に行くことができなくなってしまいました。なんとか中学校を卒業したものの、一年遅れで入学した定時制高校での生活から明るい未来が見えてきます。
そして念願の職業に就くと、ハッサクはようやく実を結びます。
家族の見守りだけでなく、おばあちゃんもハッサクを通して見守ってくれたようですね。
感動的なのは、本編が終わった最後のページの場面です。
次の世代も見守るようなハッサクの様子に思わず涙が出てきました。

この本は、生きることの閉塞感に悩むお子さんだけでなく、親の立場にある大人の方にもぜひ読んでいただきたいと思います。
一般的な近道が正解ではないよ、辛い思いを助けてくれる人がたくさんいるよ、と伝えてくれる作品です。